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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第13章(3)

《彼女は煙草をもみ消した。口紅はついていなかった。「こうやってあなたを煩わせているのは、私としては警察とうまくやる方が手間が省けると言いたいだけ。昨夜言っておくべきだったわね。それで今朝、事件の担当者を探し当てて会いに行ってきた。初めは、あなたに少し腹を立てていたわ」「だろうね」私は言った。「たとえ、あったことを洗いざらい話しても、信じなかっただろうさ。やることといえば、とりとめもないことをくどくど...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第13章(4)

《ブロンドだった。司祭がステンドグラスの窓を蹴って穴を開けたくなるような金髪だ。黒と白に見える外出着を着て、それにあった帽子をかぶっていた。お高くとまっているように見えるが、気になるほどではない。出遭ったが最後、相手を虜にせずには置かない女だ。おおよそ三十歳ぐらいだろう。...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べる―第13章(5)

《見るたびに好ましくなる顔だ。目の覚めるようなブロンドなら掃いて捨てるほどいる。しかし、この娘の顔は見飽きるということのない顔だ。私はその顔に微笑んだ。「いいかい、アン。マリオット殺しはつまらんミスだ。今回のホールドアップの背後にいるギャングは決してこんなことはしない。ヤクで頭がいかれた奴の仕業だ。連中が連れていった用心棒が泡を食ってやったに決まっている。マリオットがへまをやり、どこかのちんぴらが殴...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第14章(1)

14 【訳文】 《私はロシア煙草の一本を指で突っついた。それからきちんと一列に並べ直し、座ってた椅子をきしませた。証拠物件を捨ててはいけない、というからには、こいつは証拠品だ。しかし、何の証拠になる?...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べる―第14章(2)

14【訳文】(2) 《電話のベルが鳴り、上の空で電話に出た。冷静で非情な、自分を優秀だと思い込んでいる警官の声。ランドールだ。決して声を荒らげることはない。氷のようなタイプだ。「通りすがりだったんだよな、昨夜ブルバードで君を拾ってくれた娘は?...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べる―第15章

15 【訳文】 《女の声が答えた。乾いたハスキーな声で外国なまりがあった。「アロー」「アムサーさんとお話ししたいのだが」「あのう、残念です。とってもすみません。アムサー電話で話すことありません。わたし秘書です。伝言をお聞きしましょう」「そこの住所はどうなってる? 会いたいんだが」「ああ、あなたアムサーに仕事で相談したいですか?...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第16章

16 【訳文】...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第17章(1)

17 【訳文】(1) 《呼び鈴を鳴らそうが、ノックをしようが、隣のドアから返事はなかった。もう一度試してみた。網戸の掛け金は外れていた。玄関ドアを試してみた。ドアの鍵は開いていた。私は中に入った。...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べる―第17章(2)

【訳文】 《寝具の下で女のからだは木像のように硬直した。目蓋も凍りついた。縮んだ虹彩を半分覆った位置で。息は止まった。「信託証書が高額すぎてね」私は言った。「この辺りの物件の価格からいうとだが。リンゼイ・マリオットなる人物の所有になる債権だ」...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第18章(1)

18-1 【訳文】...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第18章(2)

18-2 【訳文】 《縞のヴェストに金ボタンの男がドアを開けた。頭を下げ、私の帽子を受け取れば、今日の仕事は終わりだ。男の後ろの薄暗がりに、折り目を利かせた縞のズボンに黒い上着を着て、ウィング・カラーにグレイ・ストライプ・タイをしめた男がいた。白髪混じりの頭を半インチばかり下げて言った。「ミスタ・マーロウでいらっしゃいますね? どうぞこちらへ」...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第18章(3)

18-3 【訳文】...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第18章(4)

どんなドレスを着たら、裾が首のあたりまでまくれ上がるものだろう。 【訳文】 《「ニュートンはいいでしょう」私は言った。「ギャングとつるむようなタイプじゃない。当て推量に過ぎませんが。フットマンについてはどうですか?」 彼女は考え、記憶を探った。それから、首を振った。「彼は私を見ていない」「翡翠を身につけてほしい、と誰か言いませんでしたか?」...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べる―第18章(5)

ドレスが首のあたりまでめくれ上がったのには理由があった 【訳文】 《「男はリンの座っている側に近づくとすぐに、スカーフを鼻の上まで引っ張り上げ、銃をこちらに向け『手を挙げろ』と言った。『おとなしくしてればすぐに済む』。それからもう一人の男が反対側にやってきた」「ベヴァリ・ヒルズは」私は言った。「カリフォルニアで最も治安が行き届いた四平方マイルですよ」...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第18章(6)

フィネガンの足のような寒気、というのは 【訳文】 《女は私の膝の上にしなだれかかった。私は顔の上に屈み込んで眼で舐めまわした。彼女は私の頬に蝶がキスするように睫を震わせた。唇を合わせたとき、彼女の唇は半開きで燃えていた。歯の間から舌が蛇のように飛び出してきた。...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第19章

口紅は落ちているのか、いないのか   【訳文】 《曲がりくねった私道を歩き、高く刈り込まれた生垣の陰で迷子になりながら門に出た。新顔の門番は私服を着た大男で、どこから見てもボディガードだ。うなずいて私を通した。 ホーンが鳴った。ミス・リオーダンのクーペが私の車の後ろにとまっていた。私はそこまで行き、中をのぞき込んだ。冷やかで皮肉っぽい顔が待っていた。...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第20章

―帽子のリボンと汗どめバンドの取り違えが命取り― 【訳文】 《インディアンは臭った。ブザーが鳴ったとき、小さな待合室の向こう側にはっきりと臭いがしていた。私は誰だろうと思ってドアを開けた。廊下のドアを入ったところに、まるで青銅で鋳造されたみたいに男が立っていた。腰から上の大きな男で、胸が分厚かった。浮浪者のように見えた。...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第21章(1)

サンセット・ブルヴァードを、「素早く通り抜け」られるはずがない 【訳文】...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第21章(2)

指輪がフィンガー・ブレスレットを連想させた、その理由 【訳文】 《艶やかな巻き毛の、浅黒く痩せ細ったアジア風の顔をした女だ。耳には毒々しい色の宝石、指にいくつも大きな指輪をしていた。月長石や銀の台に嵌めたエメラルドは本物かもしれないが、どういうわけか十セント・ストアのフィンガー・ブレスレットのような安物に見せようとしていた。手はかさかさして黒く、若さもなく、指輪に似つかわしくなかった。...

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『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第21章(3)

―どうして村上氏は原文にない「死者」を訳に付け足したのだろう― 【訳文】 《「どうしてそうなったのか知りたいという訳か?」「そうだ。こちらが百ドル払わなきゃいけないくらいだ」「その必要はない。答えは簡単だ。私の知らないこともある。これはそのひとつだ」 一瞬、男を信じかけた。男の顔は天使の羽のように滑らかだった。「なら、どうして百ドルと臭くてタフなインディアン、それと車を寄こしたんだ?...

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